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柳家東三楼の「Break a leg 落語の時間ですよ」Vol.38

2024.05.15

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口は成功の元

 この5月3日で師匠に入門し丸25年が経ちました。10年前のGWは国立演芸場で真打ち披露の興行をしていましたので、三代目柳家東三楼を襲名して10年になります。高校一年の夏休みに落語にハマって以来32年、変わらずに落語とともに人生を歩んでいます。東大に行くほど頭は良くなく、スポーツ選手になるほど運動神経も良くなく、とにかく先生からは「お前は口から先に生まれてきたのか」「口は災いの元」と言われて育ち、今では口で生計を立てていますので、天職なんだとしみじみ思います。

 4月22日のニューヨーク・カーネギーホールでの独演会は無事に大成功し、ベイエリアからも何人も会場に来てくださいました。同ホールでの英語での落語公演は史上初で、またブロードウェイという世界の舞台の本場を真横に、自分でもよくやったと思います。とにかくできることは全てやりましたので、僕としては燃え尽きたと同時に、高校、大学、入門当初の自分が思い描いていた噺家人生と比べると、ずいぶん遠いところに来たんだなといつもの公園を歩きながら思います。

 僕は、人と比べたり比べられたりするのがとても苦手です。自分で調べて工夫して、かなり努力して責任を持ってやることを、他の人の活動や価値基準で比べられたくないからです。そして、大勢が持つ価値基準が良いとも思わないから、自分で考えて工夫して変える、変えようとするわけです。なので落語のコンテストやコンクールは嫌いでした。賞はいただいてますが。

 今、こうしてアメリカで皆さまの応援をいただき、新しい落語の世界を創れている状況を、散歩しながら一歩一歩、ゆっくり足を前に出して考え、とても幸せな気持ちになります。10代の自分に戻って、今の自分を見た時にどう思うかを想像すると、「かっこいい」と思えるからです。自分で考えたこと、やりたいことを皆さんにお話して(口は成功の元)、それをできる限り努力して手繰り寄せる。一つひとつ積み重ねて、大きなことを確実に成し遂げる、それは難しいですが、終わったあとの自己肯定感の強さは幸福感に繋がります。超有言実行の僕は、時として大きすぎる風呂敷を広げますが、それは自分の人生の醍醐味なんだと「味わい」に変えています。

 マンハッタンでの打ち上げで「師匠はもうベイエリアに住んでるくらいにお会いしますね」と言われ、とてもうれしい反面、不思議な気持ちでした。なぜならここ数年、ニューヨークでの落語会よりベイエリアでの落語会の集客がいいから。ありがたいことです。



柳家東三楼(やなぎやとうざぶろう) 落語家歴25年。真打として日本全国で落語を披露する中で世界中の人に落語を知ってもらいたいと、2019年よりアメリカへ移住。現在はNYのブルックリンを拠点にアメリカにてすでに200回以上の公演を行う。50州すべての州にて落語公演を実施することを目標に、日々精力的に活動中。

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