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2022.05.25

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カーボンニュートラルの実現に向けて 民間ビジネスの動向

昨今はウクライナ情勢のニュースに押されて、世間の注目度がやや低下しているかもしれないが、中長期的には、やはり世界全体の中で最も重要な課題と言っても良いのが、気候変動問題対策、すなわちカーボンニュートラルの実現に向けた対応ではないだろうか。  

改めての説明は必要ないかもしれないが、カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味している(注1)。

 日本政府でも、2020年10月、菅総理(当時)が所信表明演説でカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、それを踏まえ、同年末には、「経済と環境の好循環」に向けた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定され、14の重要分野ごとに、高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組を明記し、予算、税、規制改革・標準化、国際連携などを盛り込んだ実行計画が発表されている(注2)。 世界的にも、例えば、欧州連合は 2050 年までに域内で排出する温室効果ガスを実質ゼロにする「欧州グリーンディール」を掲げて産業戦略を推進しており、米国においても、バイデン大統領の就任以来、パリ協定に復帰し「グリーンニューディール」を打ち出すなど、様々な取り組みが各国で進められている。    

しかし、各国政府が一生懸命旗を振っているのは理解できたが、民間部門では、カーボンニュートラルの実現に向け、どういう技術が開発されて世に出されようとしているのか、意外と見えにくいのではないだろうか。確かに当地にいれば、電気自動車はたくさん道路を走っているし、電気代の明細を見れば再生可能エネルギーで電気を一定量作っていることも分かるが、カーボンニュートラルという大きな課題に向け、ビジネスの現場で、実際、何が起きているのかという疑問を持たれる方もおられるのではないか。その疑問に少しでも答えようと、シンクタンクの知見を使いながら、当事務所で調査研究を進めてきているので、今回はその一端を紹介したい。

カーボンニュートラルに向けた米国発ベンチャーの動向調査  


昨年5月に公表した「脱炭素技術をめぐる北米の動向調査」というレポートでは、前述したグリーン成長戦略」の14重要分野のうち、特に日本の産業競争力やエネルギー政策上極めて重要である「洋上風力産業」「水素産業」「自動車・蓄電池産業」及び「半導体・情報通信産業」などの分野を対象に、シリコンバレーを含む米国のいずれかの地域に拠点を有するスタートアップ企業に焦点を当てて、分野別に技術開発動向を公開情報ベースで分析・整理している(注3)。

カーボンニュートラルを後押しする民間資金供給に係る動向調査


その上で、本年は、米国及び欧州における気候変動対応に係る民間サイドの資金供給の実態を把握するための調査を実施した。この背景としては、カーボンニュートラルの実現に向けた動きがグローバルに加速する中で、その実現を後押しする資金供給に着目すると、昨今のESG(環境<Environment>・社会<Social>・ガバナンス<Governance>)投資の高まりも受けて、気候変動問題の解決に資する民間企業の技術開発・実装に向けた取組みに対して、従来の政府からの補助金等だけでなく、民間サイドからもリスクマネーを含めた資金を供給していく動きが注目されている。  

これを踏まえ、今年4月に公表した「脱炭素技術の開発・実装を後押しする民間資金供給に係る動向調査」レポートでは、①再生可能エネルギー、②蓄電池、③水素(製造、貯蔵、輸送)、④CCS(Carbon Capture Storage)・CCUS (Carbon Capture Utilization and Storage)及び⑤持続可能な航空燃料の五つの分野に焦点を当てて、公開情報の収集・分析、データ分析及び有識者ヒアリングからなる調査結果をまとめたところである(注4)。  

カーボンニュートラルに向けた旅はまだ始まったばかりである。しかし、当地をはじめ、米国各地で、ベンチャー企業も含め、我先にと技術を開発し、大きなビジネスを展開しようと民間企業の方々が日々トライを続け、それに対する資金調達手段も多様化してきている。是非、日本企業の方々も、米国の有望な企業と連携し、社会課題の解決とビジネスチャンスの創出に取り組まれることを期待したい。

(注1) https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/
(注2) https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012.html
(注3) https://www.jetro.go.jp/world/reports/2021/02/34ba01f1901b787f.html
(注4) https://www.jetro.go.jp/world/reports/2022/02/761847444312f214.html

ジェトロ・サンフランシスコ事務所 中西 友昭(なかにし ともあき)
2000年通商産業省(現 経済産業省)入省後、大臣官房、経済産業政策局、資源エネルギー庁等のポストを歴任した他、内閣官房に出向して成長戦略の取りまとめを担当。2020年11月に、ジェトロ・サンフランシスコ事務所次長に就任し当地の産業調査を担当。WEFフェローとしてデータ・ガバナンスの議論に参加。東京大学法学部卒、ノースウエスタン大学ロースクール修了。

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