「CES 2023」米ラスベガスで開催
ハイテク技術見本市「CES 2023」が1月5日から8日の間、米国ラスベガスで開催された(注1)。CESはテクノロジーを切り口に、仮想現実・拡張現実、食品・アグテック、スマートホーム、デジタルヘルス、ロボティクス、自動車技術・先進モビリティーなど、多数の分野に分かれ、主催者の発表によると、世界中からスタートアップ1000社を含む3200社以上の企業が出展した。一方、来場者は11万5千人を超え、米国外からは140カ国以上、4万人以上の来場があった。
CESを主催する全米家電協会(CTA)が優れたデザインとエンジニアリングを備えた製品を表彰する「CESイノベーション・アワード」を発表している。受賞企業(注2)に話を聞いたところ、「アワードを受賞したことで、問い合わせが増えた」という効果を語っていた。別の受賞企業は「アワードを受賞したことがはっきりわかるよう、ブースに大きく表示している」と、展示上の工夫を述べていた。受賞企業は、例えば、野菜や果物の熟度をチェックするスキャナー(OneThird、本社:オランダ)や、バーチャル環境で振動などのさまざまな生命感を体感できるベスト(Actronika、本社:フランス)、カーテン、照明、エアコン、音楽などさまざまなホームデバイスをコントロールできるデスクトップコントローラー(HANGZHOU LIFESMART TECHNOLOGY、本社:中国)などのイノベーティブな製品・サービスが来場者の注目を集めていた。
次に、CESでは、大企業のイノベーティブな新サービスも見ることができる。キヤノンUSAのウェブ会議ソリューション「アムロス(AMLOS)」は、最優秀賞に当たるベスト・オブ・イノベーションを受賞した。同賞は、各カテゴリーにおいて最高の評価を得た製品に与えられる。2100件の審査対象の中から17件が同賞を獲得し、アムロスはソフトウェア・モバイルアプリケーション部門での受賞となった。アムロスは、キヤノンの画像処理技術を利用したハイブリットミーティング向けのソフトウェアソリューション。同ソフトウェアが整備された会議では、職場側の話し手がシンプルで直観的な手のジェスチャーにより、カメラのフォーカスを誘導・コントロールできる。例えば、手元の資料やホワイドボード上の記載を、リモート勤務側にアップで表示させられる。一方、リモート勤務側は、専用ソフトをダウンロードすることなく、ブラウザ上で見たい画面をシンプルで直観的なUI(ユーザーインターフェース)でカスタマイズし見ることができる。同ソフトウェアは、マイクロソフトの「チームズ(Teams)」と連携しており、今後ほかのビデオ会議ツールにも拡張することを予定している。
さらに、47に分類された製品・技術部門の中で、自動車技術部門は昨今の電気自動車(EV)シフトや安全機能に対する需要の高まりなどから高い注目を集め、同部門の企業が展示する9会場のうち、メイン会場だけでも220社以上が出展する盛況ぶりだった。ソニーのブースでは、ソニーグループの吉田憲一郎代表執行役会長兼社長CEO(最高経営責任者)が登壇して記者会見が行われ、ホンダとの共同開発によるBEVコンセプトカー「アフィーラ」を発表して注目を集めた。両社は2022年10月に合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」を設立。北米では2026年春に納車開始が予定されている。そのほか、メルセデス・ベンツはBEVコンセプトカーの「ビジョンEQXX」を披露。エネルギー密度を上げることでバッテリー重量の3割減を実現し、1回の充電で620マイル(約998キロ)の走行を可能にするという。
また、CES 2023においても、韓国、台湾、フランス、オランダ、カナダ、シンガポール、インドなど各国・地域のパビリオンも設置され、その中に企業がブースを構えていた。韓国パビリオンは複数のエリアに設置され、100社以上の韓国企業が出展していた。また、CES会場外に韓国パビリオンをPRする複数のバナーも見られた。ジェトロは、スタートアップ企業が集まる「ユーレカパーク」内にジャパンパビリオンを設置。CES2023では、日本企業36社が出展した(注3)。このうち、7社がイノベーションアワードを受賞した。
【注1】新型コロナウイルス感染拡大の影響で、CES 2021はオンラインCES 2022はハイブリッド形式で開催された。
【注2】CESイノベーション・アワードを受賞した企業は下記で確認可能
https://www.ces.tech/innovation-awards/honorees.aspx
【注3】ジェトロのジャパンパビリオンの出展企業は下記で確認可能
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/announcement/2022/03fdb3dd83cedfb7/CES2023Companylist.pdf
(参考)
ハイテク技術見本市「CES 2023」、米ラスベガスで開催、世界中から3200社以上が出展(日本、米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/492e7e7586177c65.html
ハイテク技術見本市「CES 2023」、キヤノンがベスト・オブ・イノベーションを受賞(日本、米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/28c7c66ccf55f1c3.html
ハイテク技術見本市「CES 2023」、EVコンセプトカーが続々と登場(米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/9178631a30da6e6b.html
CES2023ジャパンパビリオン出展スタートアップ36社が決定! ―イノベーションアワードは過去最多の7社が受賞
https://www.jetro.go.jp/news/announcement/2022/03fdb3dd83cedfb7.html
ジェトロ・サンフランシスコ事務所 石橋 裕貴(いしばし・ゆうき)
2011年日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。東京本部、沖縄事務所を経て、2018年7月よりサンフランシスコ事務所に赴任。東京本部では海外調査部にて年次調査レポート「世界貿易投資報告」の作成などを担当。沖縄事務所では食品の輸出促進などに携わる。サンフランシスコ事務所では輸出促進、調査を担当。