コロナ禍では、さまざまな事業活動が制限されていて、海外からの投資や駐在員の活動が以前と比較し不活発な時間が続きました。今はその時のような停滞からは脱したようです。今回は、米国で新たに事業をスタートさせ、外国の本社から米国支社へ派遣するための駐在員用のビザについて説明いたします。
L-1ビザ
国際企業の駐在員によく利用されるのはL-1ビザです。海外に本社または関連会社があり、その会社から米国の支店に駐在員を派遣する際に用いられます。L-1ビザは、L-1AビザとL-1Bビザに分かれ、L-1Aは管理職や役員に、L-1Bは技術職や専門職に利用されます。
同ビザの申請者個人は、一定の勤務条件を満たす必要があります。ビザ申請の直近3年間に、1年以上親会社で勤務している実績が必要になります。L-1Bは近年審査は厳しくなり、審査の途中で追加資料の要求がくることも非常に多くなっています。本人の経歴、外国の本社での職務内容、米国で予定される職務内容等、細かくチェックされます。また職務は相当高度なものである必要があります。
申請は移民局を通して行いますが、雇用主はL-1ビザに要求される必要書類を移民局へ提出する必要があります。主な必要書類は、親会社の決算報告書、会社登記簿、給与台帳、米国会社の支店の登記の証明、株券コピー、事務所リースのコピー、組織図、申請者個人の実務経験証明といった書類になります。現在、移民局の審査時間は、移民局の公表によると1ヶ月程度です。しかし、追加資料の要求があった場合、さらに数ヶ月かかる可能性があります。移民局特急審査を利用した場合は、最短15日で結果がわかります。移民局の許可が出れば、その許可書をもとに後日、米国大使館でビザスタンプ(査証)の申請が必要になります。L-1の米国での滞在期限は、最長でL-1Aは7年、L-1Bは5年になります。
Eビザとの比較
Eビザは投資ビザと呼ばれますが、L-1ビザと同じように国際企業駐在員にも利用されます。同じ会社でL-1ビザもEビザも利用できる会社が多くあります。L-1とEビザの大きな違いは、投資額に重点を置くかどうかです。Eビザのほうが、L-1よりも投資の大きさが重点的に見られます。例えば、米国内で新設する会社で、事務所の規模が小さかったり、投資が大きくない場合は、L-1を優先して考えたほうが良いでしょう。投資額が大きい場合は、Eビザの方が取得しやすい場合があります。近年、とくに技術職や専門職については、Eビザのほうが比較的取得しやすい状況になっています。Eビザは移民局への申請なしに、直接米国大使館で申請することができます。
米国大使館でのビザ(査証)申請
移民局よりL-1許可をもらえれば、次は米国入国に必要な査証(ビザスタンプ)を取得する必要があります。ビザスタンプは米国大使館での領事との面接を経て取得できます。面接予約をし、面接日に米国大使館に赴き、領事との面接に望みます。面接で許可を得られれば、その後おおむね7日から10日で、L-1ビザの貼付されたパスポートが指定の住所に送られてきます。