雇用ベースの永住権は、国際企業の管理職(EB-1)や専門職(EB-3)の人に利用されることが多いですが、申請する場合の多くは雇用主を通して永住権申請が必要になります。しかし、雇用主を通さないでも申請できる方法があります。EB-2(大学院卒業資格を持つ専門職)の中で特別枠としてあるNational Interest Waiverです。通常はあまりなじみのない申請ですが、個人の業績次第では該当する方もある程度の割合でいると思われます。最近も当事務所に問合せがありました。今号はこのNational Interest Waiverについてご説明いたします。
National Interest Waiverとは
National Interest Waiverで永住権を申請するためには、並外れた能力をもっている人で、科学、芸術、ビジネスの分野で活動しており、その活動が米国の利益になると認められることが必要です。先に説明した通り、雇用ベース永住権はEB-1、EB-2、EB-3とありますが、National Interest WaiverはEB-2のカテゴリー内で条件が設定されています。
米国の利益になるためにはどのような要素が必要になるでしょうか?永住権審査をする米国移民局は次の3点を条件として挙げています。
①個人の活動が米国において非常に価値があり、重要なものであること
②個人は米国で自分の専門性を発展させるのに良い立場にいること
③個人の活動が米国の利益になること
とくに米国の利益になる点は大事になります。
National Interest Waiverの例としては、医学分野で最先端の治療の研究者、米国の医療の発展に役立つ活動をしている医師、特定の分野で特許を持つ技術者でその技術が米国の産業発展に多大なる貢献になる、といったケースが考えられます。それでは具体的にどのような書類がNational Interest Waiverの条件を満たすために必要になるでしょうか?以下のような書類が考えられます。
①業界の権威ある会社や団体、大学の専門分野の教授といった方々からの推薦状
②申請者個人が書いた専門分野の記事、論文、出版物
③大手の新聞社、専門誌、業界誌で申請者個人の業績について書かれた記事
④所得の証明
⑤大学や大学院の卒業証明、成績証明
⑥専門分野の免許、資格
National Interest Waiverは、雇用主を通して永住権申請できますが、先に説明したとおり雇用主なしに、自分個人単独での申請も可能です。
National Interest Waiverの 申請手順
EB-1を除き雇用べース永住権は移民局への永住権申請の前に、連邦労働局よりLabor Certificationを取得することが求められます。National Interest Waiver は、このLabor Certificationの取得が必要ありません。結果、以下のような流れで申請を進めることができます。
雇用主はI-140というフォームとNational Interest Waiveに該当することを証明できる書類を準備します。これらの書類一式を移民局の所定のセンターへ送ります。I-40が許可になれば、申請者個人がI-485(資格変更手続き)というフォームを移民局の所定のセンターへ送ります。このI-485申請の際、労働許可および旅行許可申請も同時にできます。I-485の審査の最後に地方移民局で面接があり、面接で許可されれば永住権を取得します。
なお、申請者個人が海外にいる場合、I-140許可の後は、米国外の米国大使館でImmigrant Visaの面接手続きを行う必要があります。通常Immigrant Visaは6か月有効で、この期限内に米国に渡れば永住者として入国できます。