パーソナリティ障害について
人は皆それぞれ、パーソナリティ特性を持っています。パーソナリティ特性とは、認知(自分、他人、イベントなどの捉え方)や、感情(感情の起伏や激しさ、反応の仕方)、衝動コントロール、または人との付き合い方などです。
それらのパーソナリティ特性が、顕著に逸脱していて、本人や周りの人、または対人関係に著しく苦痛や悪影響を与える場合。そして、それらの特徴が、他の精神障害や薬やドラッグが原因ではない場合にパーソナリティ障害が疑われます。
パーソナリティ特性とは、比較的長い間一定してみられるものなので、診断されるのはある程度年齢を重ねてから(思春期後など)が多いです。初めての症状が思春期や成人期であることがよくあります。本人は問題だと思ってないことも多く、自分から治療を求めないことも多いです。うつや不安、躁状態や妄想などとは異なり、薬で改善されるものではなく、精神療法を通じて、行動や感情処理、人との付き合いのパターンを変えたり、それらによって生じる苦痛を減らしたりすることが効果的です。ただ、パーソナリティ障害がもたらす苦痛の結果としてうつや不安がある場合に、そちらを薬で抑えることは可能です。
パーソナリティ障害の原因についての研究はあまり進んでいませんが、遺伝と環境が加担しているというのが現在での理解です。パーソナリティ障害の遺伝子を持った人が、著しいストレスに晒されて発症するいう説や、環境または遺伝子のどちらかだけでも発症するという説があります。
パーソナリティ障害は長期にわたって続きます。しかし、認知や行動を変えることで、人生の質を向上することは十分可能です。そのためには本人の自覚と、変わりたいという意志、そして理解ある治療者が必要です。
寺尾 明希子(てらお あきこ)心理療法士
カリフォルニア州公認心理療法士、臨床ソーシャルワーカー。サンフランシスコ大学で心理学の学士号、心理学の修士号、社会福祉保健学の修士号を取得。現在はサンフランシスコ、ベイエリアで、対面とオンラインの両方で心理セラピーとコンサルテーションを提供。専門は、うつ、不安、人間関係の問題、摂食障害。家族機能不全から発生するさまざまな症状を扱う。また、問題を抱える人の家族向けのコンサルテーションも行う。