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自傷と自殺 -寺尾先生-

2024.10.16

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自傷と自殺

 自殺は、アメリカでも他の先進国とおなじように死因の上位を占めています。CDCによると、2022年にはおよそ4万9000人がアメリカ内で自殺で亡くなり、そのうち80%が男性でした。年齢別の自殺率を比べると、85歳以上が一番高く、次に75〜 85歳、45〜54歳と続きます。

 自殺というのは、人が希望を失って、死ぬ以外に出口や解決法がないと感じるときに起きます。多くの場合においては、長い間考えて計画した上での行動なため、本人の強い動機とエネルギーが必要とされます。若者の場合は、衝動で行動してしまう率が他の年齢よりも高いとされていますが、それでもやはり大きなエネルギーが必要です。逆に言うと、そのような極限の状態にある人間というのは希望を失っているので、なんとか周りから助けを得て精神状態、健康や環境が改善されれば生きる希望と意思を取り戻すことができるでしょう。

 わたしたち人間の使命の一つに、苦しんでいる人の苦しみを否定せず、コミュニティーとして支え合うことがあります。そのように苦しんでいる人が、自分の苦しみを語って嘆き、それを他人に聞いてもらって支えられる場が必要です。もちろん、そのような状態に人をはじめから追いやらない環境も大切です。不公平な扱い、差別、経済的な格差などをなくす社会を作ることはとても大事です。

 自分を傷つける行動でも、自殺とは別なものとして自傷行為があります。リストカットがよく知られていますが、自分を傷つける行動全般を指します。自傷をする理由はさまざまで、痛みを感じることで落ち着く、心の痛みからの逃避、自分の苦しさを周りに伝えたい、などというものが挙げられます。自傷は現実に耐える手段と考えられ、自殺とは別のものとして考えられています。当事者の周りに対するメッセージとしても受け取られます。


寺尾 明希子(てらお あきこ)心理療法士

カリフォルニア州公認心理療法士、臨床ソーシャルワーカー。サンフランシスコ大学で心理学の学士号、心理学の修士号、社会福祉保健学の修士号を取得。現在はサンフランシスコ、ベイエリアで、対面とオンラインの両方で心理セラピーとコンサルテーションを提供。専門は、うつ、不安、人間関係の問題、摂食障害。家族機能不全から発生するさまざまな症状を扱う。また、問題を抱える人の家族向けのコンサルテーションも行う。

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