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心臓麻痺(心筋梗塞、Heart Attack, MI) -紀平先生-

2025.02.05

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心臓麻痺(心筋梗塞、Heart Attack, MI) -紀平先生

 「うちのおじいちゃんは心臓麻痺で死んで」とよく会話に出てきます。この心臓麻痺というのは医学用語ではなく、心室細動という不整脈で心臓がポンプとして有効に働かなくなって、麻痺して、死に至ったということです。一般的には急性心筋梗塞で亡くなった事を指します。

 その原因は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈と呼ばれる動脈が、動脈硬化によりプラークと呼ばれる粥(かゆ)状のもので内腔が狭くなり、さらに、プラークがはがれて詰まったり、血栓(血の塊)ができて内腔が詰まってしまうことが原因と考えられています。冠動脈は、心臓をとり囲むようにして冠状に走っており、脳の動脈と並んでEnd Arteryと呼ばれ、その支配領域へ独占的に血行を送ります。ですからその血管がいきなり詰まれば、その支配領域の組織、細胞は死にいたります。他の臓器の動脈はたいてい複数の血管が血流を送り、そのうちの1本が急に詰まってもさほど影響はないのです。

 心臓麻痺の症状は、左胸部の激痛、絞扼感(締めつけ感)、圧迫感として発症します。「an elephant on my chest(ゾウが胸に乗っている)」と表現したアメリカ人の患者さんが実際にいましたが、痛みは、あごや、首、左腕、心窩部に放散して現れることもあります。左腕の痛みで救急へ飛び込んだら実は心臓麻痺だったという話もよく聞きます。呼吸困難、意識障害、吐き気、冷や汗を伴うことも多いです。その症状は30分以上持続し、重症ではショック状態となり、即死ということもあります。高齢者では特徴的な胸痛でなく、息切れ、吐き気など症状で発症することも少なくなく、糖尿病患者では胸痛を自覚するのも麻痺していて、随伴症状だけのこともあります。

 冠動脈の動脈硬化を進行させる危険因子は、加齢(男性45歳以上、女性65歳以上)、男性であること、狭心症・心筋梗塞の家族歴、高コレステロール血症、糖尿病、高血圧、喫煙、肥満、運動不足、痛風、精神的ストレスなどがあげられます 。心臓麻痺に対し、狭心症は心筋の壊死はなく、可逆的で、心臓本来のはたらきであるポンプ機能は正常に保たれている状態を言います。ですから同じような胸痛を引き起こしても、その症状のある時間も短く軽いのが普通です。

 心臓麻痺は前記のような特徴的な強い持続性の胸痛と、心電図の所見、血清酵素の上昇から診断されます。心臓麻痺を疑うような胸痛があれば、緊急にその診断、治療開始が必至です。 


紀平 昌保(きひら・まさやす)
医学博士。名古屋市出身。名古屋大学医学部卒業。旧日本整形外科認定医。日本での医師歴7年。1992年よりアメリカで診察。アメリカ家庭科学科学会認定医。ホームドクターとして全科(内科、小児科、外科、婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻科、眼科、泌尿器科、精神科)、健康診断・人間ドック、理学療法担当。


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